墓地埋葬法

墓地埋葬法

 墓地埋葬法は、正式には「墓地、埋葬等に関する法律」といい、昭和23年に施行されました。全28条と簡素な構成となっていますが、火葬、埋葬、改葬や墓地、納骨堂などについての規制が定められていますので、いくつか条文を拾ってみます。

第1条(定義)
この法律は、墓地、納骨又は火葬場の管理及び埋葬等が、国民の宗教的感情に適合し、且つ公衆衛生その他公共の福祉の見地から、支障なく行われることを目的とする。

 多くの法律にとって第1条は、どのような目的でこの法律が作られているかを規定する、法律を解釈する上での最も基本的かつ重要な部分となりますが、墓地埋葬法のの第1条はとてもシンプルです。「国民の宗教的感情に適合する」よう、また「公衆衛生・公共の福祉」に反しないよう、墓地などの管理や埋葬などを行うことを目的としています。皆が好き放題に墓地を作ったり埋葬したりすれば、周辺住民にとっては迷惑な場合もあるでしょうから、これらを規制することは当然と言えます。

第3条(24時間内の埋葬・火葬の禁止)
埋葬又は火葬は、他の法令に別段の定があるものを除く外、死亡又は死産後24時間を経過した後でなければ、これを行つてはならない。但し、妊娠七箇月に満たない死産のときは、この限りでない。

 第3条は、死後24時間経過しなければ埋葬、火葬を行ってはならないとしています。この条文の趣旨は「仮死状態の可能性、蘇生の可能性があるから」だそうです。確かに昔はそういう現象もあったのかも知れませんが、現代では医師が死亡診断ををするので、蘇生などまずありえないでしょう。それでも改正されていないのは、別の理由があるのでしょうか。考えられるのは、遺族にとって必要な時間の確保でしょうか。家族の死を受け入れ、気持ちを整理することはどうしても時間がかかります。もし第3条にそうした配慮の趣旨が込められているのかもしれません。

第4条(墓地外の埋葬、火葬場外の火葬の禁止)
(1)埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行ってはならない。
(2)火葬は、火葬場以外の施設でこれを行ってはならない。

 この規定により、一般の方が好きな場所で火葬、埋葬することを禁じています。

第9条第1項(市町村長の埋葬・火葬の義務)
死体の埋葬又は火葬を行う者がないとき又は判明しないときは、死亡地の市町村長が、これを行わなければならない。

 身寄りのない方が死亡された場合、自治体が火葬を行い、永代供養をしていただける寺院に遺骨を納めます。おひとりさま世帯の増加によりこうしたケースが増えていく懸念があります。是非とも終活を進めるうえで、考えておきたいことです。

 他の条文では、墓地・納骨堂・火葬場など、各施設の経営についてや、違反した場合の罰則規定が置かれています。

散骨は?

 何度か改正がなされているとはいえ、昭和28年の施行です。近年人気の新しい供養の形式である「散骨」に関する規定がありません。散骨についてはある程度ルールに従って実施されてはいますが、法令としてはごく一部の自治体で規制する条例があるに留まり、法律としての規定は未だ存在していません。散骨は今後益々人気の高まる供養の方法といわれています。墓地埋葬法が目的とする公共の福祉の見地からも、事情に即した法整備が待たれます。

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