内縁の配偶者に財産を承継させる方法

内縁とは

民法 第739条第1項(婚姻の届出)
婚姻は、戸籍法(昭和22年法律第224号)の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。

 内縁とは、夫婦の実態はあるが、役所に婚姻届を提出していないので法律上は夫婦ではない関係のことをいいます。「事実婚」とも呼びます。たまに一緒にされがちですが、内縁は法律上夫婦ではありませんが、夫婦に準じた関係として法律上配偶者と同等に認められる権利・義務も多くあります。

民法上の配偶者と同等の権利義務

・貞操義務
・同居・協力・扶助の義務(民法752条)
・婚姻費用分担の義務(民法760条)
・日常家事の連帯責任の義務(民法761条)
・帰属不明財産の共有推定(民法762条)
・財産分与(民法768条)
・嫡出の推定(民法772条2項)など

 他にも、例えば労災保険の遺族補償なども受けることができます。一方で愛人関係とは、相手が既婚者であることを知った上で交際を続けている状態、つまり不倫関係のことです。上記の権利義務は愛人には認められず、内縁関係とは全く異なります。

 ただし、法律上の夫婦でない内縁の配偶者には認められない権利もあります。その一つが相続権です。長期間同居して事実上の夫婦として疑いがない状況であったとしても、婚姻届の提出がなければ、残念ながら相手の財産を承継する権利はありません。

特別縁故者

 相続手続きにおいて、内縁の配偶者に全く可能性がないわけではありません。特別縁故者として請求するという方法があります。

民法 第958条の3 第1項(特別縁故者に対する相続財産の分与)
(略)相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。

 ただし、「相続人が誰もいない場合に」という大きな要件があり、実際にこの規定を使って財産を承継することは現実的ではありません。ちなみにこの特別縁故者は、愛人関係にあった場合でも認められる可能性もあります。

内縁の配偶者に財産を承継させる方法

 では、相続権のない内縁の配偶者に財産を承継させるにはどうすればよいか。方法は2つです。

①生前贈与

 生前のうちに相手に贈与しておく方法です。贈与については、年間110万円までは贈与税が発生しないため、計画的に上手に使うことがポイントです。

②遺言書

 もう一つの方法が遺言書です。「内縁の配偶者に財産を遺贈する」という内容の遺言書を作成することで、相続権がない相手にも財産を承継させることができます。ただし、これは生前贈与でもそうですが、仮に「財産のすべてを遺贈する」としてしまうと、ご家族の法定相続人には遺留分がありますので、内縁の配偶者が遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。

 内縁の配偶者と家族がケンカすることがないよう、遺言書の内容はよくよく吟味して作りましょう。

 

前の記事

配偶者居住権

次の記事

遺産分割と認知症